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共通親柱 福井 裕司 
(建築家)
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計画案:みんなのこしかけ
 (風景/腰掛け/橋/休憩/眺望/風景:親柱に腰掛ける)
 ◎ デザインするにあたって
橋は基本的に二点間をつなぐものとしてつくられ、そのおかげで途絶えていた空間や生活行為が新たな連続性をもって展開される。この計画ではよりその連続性を考慮した上で、従来の親柱を限定された空間の始点又は終点と見なさずに、その前後にある環境(風景、行為)に対してどのように連結できるかということをテーマとして「親柱」を「周囲との接触体」という意味での橋梁高欄端部として解釈することとした。
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以上のことから、「親柱」が果たすことが出来る役目を考慮したデザインとする。
従来の親柱のようなモニュメント性のみを持たせたデザインではなく、実際に使用できる、家具のようなものを挿入する。つまり、橋という巨大な構築物に対して、ヒューマンスケールで接する部分を持ち合わせたデザインとなる。眺めるという視覚的要素のみならず、日常的にひとりの人間が体で触れられる橋となることで、通過車両だけではなく地元の人々へより身近な橋として存在する。高欄は唯一身体が直に触れられる箇所であり、今回のデザインにより、単なる防護柵といった機能から、より身体にはたらきかけるものへと変換しようと試みている。既製品高欄が用いられた場合の高欄端部親柱におけるデザインとして、端部を二点間を締めくくる始点や終点とは見なさずに、接続点と見なすことで周囲に浸透できることを考慮した。このデザインにおいて、親柱は「こしかけ」としての身体と巨大な橋との接続点であり、日常行為の移り変わりの間に介入する接続点である。既製品高欄のデザインを利用しつつ端部(親柱)に向かうにつれそのデザインは解体(開放)され、連続体としての風景や生活行為に溶け込むように馴染んでいく。外側に膨らんだ形態は、高欄端部の前後の道や空間をつなぐような「手」や「指」をモチーフとしている。
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また、既製品高欄と組み合わせたデザインする上で、材料においては安価な既製品高欄と同じもの使用し、構成方法を変えることで異なる機能や意味をもたらすデザインとした。そして各橋梁の道路の方向角に接合し易くする上では、既製品と同素材である鋼管に曲線的要素を加えることで、各橋梁ごとに大きく異なるデザインとならないように調整可能な構成とし全体的な共通のデザインとなる。
この親柱は、吉舎町では加村橋、三良坂町では田戸橋、反谷橋、湯谷大橋、総領町では木屋川橋の親柱として設置される予定です。


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