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灰塚大橋 吉松 秀樹(建築家)
藤  浩志(美術家)
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記憶と記憶をつなぐ橋(思い出橋)
    Bridge between Memories
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橋の高欄の支柱から腕を出し、透明なプレートを支持する。橋の歩道側に95枚、車道側に96枚、合計191枚のプレートが2E間隔で並ぶ。
プレートは透明なガラス又はアクリルでつくられ、エッチングなどの技法によって様々な模様や写真、文字などが転写される。
転写されるものは、三良坂町やのぞみが丘を代表する動植物などをモチーフとした図柄でもよいし、灰塚で採取された模様(フロッタージュ)などでもよい。もちろん灰塚の方々の思い出の品や事柄を映し込んだものでもよい。
また、ダム建設前の写真などを転写することや、文章、詩などを書き込んでいくことも考えられるし、色や模様などを適度に変えていくことによって表情のある橋としていくことも可能である。こういった作業全体に統一したイメージを与えられるデザイナーや作家の参加が望ましい。
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この提案では、200枚近くのイメージが投影できるスペースを確保することによって、様々な人々の記憶をストレートに橋につなぎ、投影された記憶と訪れた人々との記憶をつないだり、将来の子供達とをつないだりといった意味あいを視覚化した形態として、高欄のデザインを考えている。
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橋の高欄は、太陽電池によって夜ほのかな点灯をする景観用の照明(シグナルライト)と、橋のたもとからのライトアップによって、夜間も昼間と異なる表情をみせる。
橋の上部を通過する道路はゆるやかにS字型シェイプをえがき、橋上でのスピードを落とさせると同時に、灰塚大橋自体が歩行者優先であることを示している。
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橋の両側にアンバランスに配された歩道には、歩行者にやさしい素材が使われる。30年近く耐久性があるとされる南洋材のデッキ材を用いても木製の歩道にしたり、灰塚の土を用いた平瓦やブロックなどが敷きつめられることによって、年月を経るごとに風格(記憶)の生まれていく橋となる。
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bridge には、「つなぐ、埋める」という意味がある。ここでは、橋を物理的につなぐだけでなく、記憶などの形のないものもつなぐものとしての新しい意味を与えていきたい。それはいわば、タイムカプセルとしての橋でもあるし、ギャラリーとしての橋でもあるし、物語としての橋でもある。
こういった意味をもって、様々なフェイズで記憶をつないでいく「思い出橋」になるように、いろんな意見を吸収できるデザインインフラとして提案を行うものである。


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