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ひまわり 岡崎 乾二郎 
(造形作家)
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はじめに(計画にあたって敷地状況などの確認)
敷地は安田再建地ひまわり集落の北西に位置し、保育園と安田小学校をほぼ隣接し、両施設からほぼ同距離、二等辺三角形の頂点の位置を占め、上下川の峡谷に対峙している。
配置的にいえば、ひまわり地域全体が吉舎町中心部と将来積極的な活用が見込まれる田総川河川敷を結びつける軸線に面し、おのずから、ひまわり再建地域の玄関ないし、顔として、このコミュニティを象徴するという重要な役割が担わされる位置にあるといえる。現在は共同墓地を横に控え、上下川護岸(河川敷)として空き地化し、どちらかというと積極的な位置づけが与えられなこの場所に、a. 地域のコミュニティを活性化する機能を与え、b. 地域全体をひとつのまとまりをもった景観上の特性を与え、より魅力的に性格づける修景上の核となる、ようなデザインと機能を与えることが中心的な課題となる。
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生活再建という、新たに地域コミュニティを形成していくという課題を抱えた地域において、コミュニティベースの計画は単にハード面からのみの計画では用を果たさない。より具体的にいえば、その場所、設備を活用するコミュニティがより主体的に関わりうる条件を同時に生成していくような方法を考慮しないかぎり、いわゆるハコモノと呼ばれる、活用されえない物理的な装置だけがもたらされる結果になってしまう。したがって計画以前にその施設の活用方法を地域の人々がみなで試行し、同時に地域のコミュニケーションを活性化するようなワークショップを重ねることが必要条件となる。

期待される役割
吉舎町伏谷地区護岸整備事業の一環として、フロー図にあるように、吉舎町安田小学校の子供たちとのワークショップを中心として、地元の人たちや子どもたちが、前もってこの場所(護岸空き地)を積極的に活用してみることによって、より身近に具体的にその意味づけが感じられるようなワークショップを行ってきた。その過程から以下のようなコンセプトが得られた。
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  1. 地域の人々が協力して季節に応じた花などの自然、植栽を楽しむような場であること
  2. 地域の人々がパフォーマンス(歌や踊り、園芸会)などを楽しむことのできる広場になること
  3. 護岸という場所から、より自然にやわらかく溶け込み、上下川の水と親しむ入り口になること
  4. 小学校、保育園の子どもたちの交流の場となること
  5. 小学校、保育園の付帯設備として、子どもたちの学習実践を外に拡げ、さらにその学習成果を外に開く舞台(インターフェイス)の役割を担うこと
  6. 管理がしやすく、明るく開けた場所であること
  7. 地域の景観全体をまとめるシンボルとして、さらに外来者を迎かい入れるサインとして、親しみやすく特色ある、表情が与えられること
  8. 誰もが行きたくなるような魅力があること

要求される機能に対するコンセプト
以上の要点をまとめれば、敷地は上下川護岸という位置づけを与えられているため、施工方法、管理面などにおいて、相応の機能を果たし、当然相応の制約を受け入れざるをえないと同時に、コミュニティを形成するひとつの核となる場所となることが期待される。
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  1. 上下川に対する面は基本的に近自然式の自然護岸とし、この敷地全体を川に面する大きな親水装置、プラットホームと位置づけること
  2. 敷地内に水を引き入れ、親水性を高めること
  3. このプラットホームとしての護岸は、同時に上谷川対岸から眺めるとひとつの舞台としての役割を果たすこと
  4. 親水性を高めると同時に変化に富む景観演出を行うため、適当なアンギュレーション(高低差)を作る
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  1. 高低差は既存の250mレベルを基本水面として、広場、舞台、多目的スペースとして使い、その基本面から、主に水を引くために掘り込んだ谷の部分、その残土を活用し、盛土をした築山の部分の二つを加えた三つのレベルで構成される。
  2. 築山部分などを中心に可能なかぎり植栽をほどこす。
  3. 基本レベルはちょうど二つの島状の部分を連結した形をとり、S字状の遊歩道が小さな山並の間をぬって進む、という格好に見立てられる。この道を延長すると、そのまま知和地区にいたる上下の谷に連なり、その上下の渓谷を借景としてとりこむ効果をねらっている。人々の視線を魅力的に誘導するとともに(誰もがこの島状をした護岸に渡って散策してみたくなるように)、この小さな敷地をより変化に富み、広く感じさせるような仕掛けである。
  4. 基本レベルをかたちづくる輪郭は、子どもたちの描いたキャラクターから抽出された、認知されやすく親しみやすい形態をしている。上空から眺めれば、地域全体を示すサインとしての働きを持つ
  5. 基本レベルの輪郭にそった内周は、ウッドチップなどの足にやさしい触感を与えると同時に、自然に溶け込む素材で舗装される。上谷川に下りる傾斜に向かって基本面の端部を多少ながらデッキ状に張り出させることで、上谷川対岸を観客席にして、舞台としての機能をもたらすことができ、様々なイベントなどに活用できるようにする。
  6. 他のエリアは地元の人々や子供たちが、季節ごとに植物の植栽を楽しめるように表土を導入する。
  7. 基本レベルは大きく3つのエリア(島)に分けられ、それぞれ特徴がもたらされる。
    (例)一周100mの島、白い小石と黒い小石の敷かれた屋外碁うち場(碁盤公園)、大きなブランコとシーソーの島、風車の島など
  8. 上谷川対岸との連続性をはかるためにも、対岸に切断されたまま、残された旧道路跡を観覧席(主賓席)、見張り台として整備しなおすことがのぞまれる。この観覧席からの眺めが公園を構成する中心軸と見立てられる。


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