@ EARTHWORKS NEWS - No.25 '98/10/15
世界一広い美術館
 『世界一広い美術館』これが今年の町巡り美術館のキャッチフレーズでした。決して誇張ではありません。何しろ3町全部を合わせた面積は東京の山の手線の内側全部よりも広いくらいなのですから。元中学校だった建物やお寺や商店街、この広いエリアの様々な所に珍しい作品が沢山飾られて、それを訪ねて歩くのは大きな楽しみでした。歩いて見て発見できたのはこの町や自然が元々持っていた表情の豊かさでありその魅力です。普通なら敷居が高くて入れそうもない町長室や議場に気さくに作品が展示され、誰でもが自由に見に行ける、この町はなんという心の広さも持っているのでしょう。そして地元の人とこの町に訪れた人みんなで作り上げたパフォーマンスやイベント。
 進みつつあるダムの工事も自然を傷め環境を壊すだけの結果にしないためには、この広いエリアを越えて、沢山の人たちがこの地域の魅力に関心を寄せ続けてくれなければなりません。今回の美術館巡りがその関心をよび起こすきっかけの一つになればと願っています。

ひまわり護岸・パフォーマンス
Zoom!  ダムエリアとひまわり集落、安田地区の接点ともなるひまわり護岸。将来に渡って利用する子どもたち、そして地元の人々とともに考え、盛り上げていこうという意図のもと、9月1日(火)5日(土)にパフォーマンスが行われ、参加者全員で踊りも楽しみました。
 10月には地元協議会も発足し、具体的な整備についての協議が始まりました。

京都市日吉ダム・視察
 10月3・4日、のぞみが丘ダム協議会「明日のダムを考える会」の有志18人が、シンポジウムで紹介された京都市の日吉ダムを視察しました。
 9日の反省会では、参加者に振り分けられていた重点視察箇所を中心に、大量のレポートとともに報告がなされました。
 そして「ダムエリア全体を生活空間と捉え、周辺道路・橋などと景観の関係について建設省と協議をしていくこと」が確認されました。

灰塚ダム公開シンポジウム
 灰塚ダム公開シンポジウムでは基調講演とパネルディスカッションを通じて、灰塚ダムの現状とアースワーク活動を取り入れた今後のダムのあり方が話し合われました。参加したのは地元の方や行政関係者など約160人。
 東京大学工学部教授の篠原修さんによる基調報告は「近代古典ダムとダム空間のグランドデザインの課題」がテーマ。特徴的なダムについてスライドを使い説明され、明治から大正、昭和の初期につくられたダムは丁寧で美しいという報告がありました。ダムはつくったら50年、100年使うものなので、今いいというだけでなく将来もよいか両方をにらんでやっていくことが大切とまとめられました。
 パネルディスカッションでは、広島工業大学教授の森保洋之さんをコーディネーターとして、5人のパネラーがそれぞれの立場からダムについて提言。発言の一部をご紹介します。
▼▼ 建設省江の川総合開発工事事務所長の森山利夫さんは、スライドを使ってダムの概要を説明。その中で、通常水がない広い範囲を有効的に利用したり、副ダムをつくって水面を確保するという計画を紹介。続いて予定される工事の中で自然や景観破壊になる恐れのある箇所などを指摘されました。
▼▼ 三良坂町企画課長山脇敏幸さんは、三町で取り組んでいるアースワークプロジェクトの活動を中心に発言。ダム周辺整備の単に見事な施設や構築物を作るというハード面ばかりでなく、それがいかに自然、環境と調和し地域社会と共生するかというソフト面こそが灰塚独自の課題だと強調されました。
▼▼ 建築家の堀正人さんは、総領町木屋地区の周辺整備事業のデザインを担当されています。全体計画の十分の一の整備が終わり、ハーブ園と自生植物の実験農園として機能している現状を紹介。また林道を計画より15m下げれば、山と谷の風景を損なわない形にできるという提案が、地元の人たちとの要望で受け入れられた成果を発表されました。
▼▼ 地元代表の藤井ツキエさんはのぞみが丘にお住まいで『2001委員会』のメンバー。灰塚住民の思いとして、削りとられた山や荒廃したふるさとを見るのは忍びないので、景観づくりに配慮してほしい、ダム湖周辺を桃源郷にしたいとの願いを話されました。
▼▼ 財団法人ダム水源地環境整備センターの田口勝也さんは、今年3月に竣工した京都市の日吉ダムをスライドを使い紹介。ダム周辺整備工事でのデザインに配慮されたという施設や構築物が報告されました。
 最後に森山所長さんから、地域の意見を取り入れたダムであること、地域に開かれたダムであること、地域の自然環境とか文化とかに調和したダムであることの3つの視点で、地域に貢献できるダムづくりを進めて行きたいという力強い発言がされ、閉会となりました。

灰塚ダム周辺景観検討業務
◇ 連絡調整会議を開催
 工事が進行してきた現在、正確な情報の把握、意見を言える場が必要です。建設省の担当者との定期的な会議を7月から毎月開いています。メンバーはアースワークプロジェクト実行委員会として3町の担当者とアースワークセンター職員。建設省側は、調査設計課の担当者と建設企画コンサルタント。今月は10月12日(月)に行われ、技術的な面での提案を諮問する専門委員会制度、貯水池周辺の景観整備方針について検討しました。

ダム工事、本格的に始まる
 ダム工事が本格的に始まり、工事現場が目の前に現われてきました。巨大で人工的なのり面を見て環境破壊を実感した住民からの声があがっています。そこで、工事の現状を建設省に問い合わせてみました。
Q 灰塚大橋はどこまで進んでいるのでしょうか?
A 橋脚が打ち上がっているところです。橋の基本構造は決定していますが、親柱や高欄、歩道の舗装部分をどうするかは、これからみなさんの意見も取り入れながら決めていきます
Q 灰塚大橋の前の上流工事道路ののり面がコンクリートワクで固められていますが、緑化はどうするのですか?
A ワクの中の緑化は植物の種子を吹き付けるという一般的なやり方を考えています。ただ、どの植物にするのか、木の種にするかはこれから決めます。ここだけでなく、のり面は沢山できるので、緑化については、真剣に考えていきます。
 今後もリアルタイムで、工事の様子を伝えていきたいと思います。また意見を取り入れてもらうためにも早めに建設省へ要望していくことが重要です。


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