■ シリーズ「アースワークの5年間」
◇ 地域の活性化の中から誕生 |
今年で6年目を迎えたアースワークプロジェクトにたくさんの方々が関わってくださいました。昨年就任された森山所長さん、催しに参加された岡本さんから、5年間の成果を評価した励ましの文をいただきました。
このシリーズでは、アースワークのそもそもの始まりから、どのように展開していったかを振り返っていきます。 |
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灰塚アースワークプロジェクトが産声をあげたのは、1994年の1月です。ちょうど生活再建地で住居の新築工事が始まったころです。
灰塚ダムは里ダムと言われ、水没戸数は332戸にもなります。洪水時にしか水がこない高水敷と呼ばれる面積が広いことも特徴です。河川法で建物を作ることができない、この高水敷を活かす方法はないかと考えるうちに、大地を対象とするアースワークという芸術の発想が出てきました。
その背景として地域の活性化に取組む3町の姿勢があります。ダム建設を過疎化や自然破壊のマイナスイメージからプラスに転換する発想です。国の水源地域対策特別措置法に指定された後、3町が共同で作成した再建実行計画にはダムエリアを7つのゾーンに分け18のメニューがのっています。現在、周辺環境整備事業として個々の計画の具体化を進めています。
こうした基本の流れの中でアートから環境を考えるという環境芸術活動を展開してきました。 |
◇ アースワークに関わって − 全国的にも珍しい活動 |
江の川総合開発工事事務所所長 森山利夫 |
灰塚ダムは、県北地域の治水、利水の両面を担うダムとして建設されていますが、併せてダム周辺の環境整備も進めています。また、地元三町では、ダム建設を契機にアースワークという環境芸術の考え方を導入し、地域づくりを進めています。
近年のダム建設では、いずれも周辺整備を行っていますが、芸術を活かして周辺整備・地域振興を行うことは、全国的にも珍しいと思います。
建設省としてもこのアースワークの考え方を取り入れた環境整備を行うとともに、地域の意見を聞き、地域に開かれ、自然環境や文化に調和したダムづくりを進めていきます。 |
◇ アースワークに関わって − 地域で活かされるアート |
広島市現代美術館学芸員 岡本芳枝 |
PHスタジオの「灰塚アースワークプロジェクト 船をつくる話」シンポジウムの席上で最も心に残り、今も考え続けていることがあります。
三良坂町の方の発言で「ダムができると植物が水に浸かる。カタクリの花を助けようと60歳を超える女性たちが数十人集まって皆で移植したこともある。本当にいいプロジェクトだと思ったら、『森のひっこし』を合言葉に、木を使った船くらい、自分たちですぐできる」といった内容でした。
私自身は「現代美術」を専門とする「美術館」の中で、ワークショップや参加型のプロジェクトを企画しているわけですが、アートが地域やそこに暮らす人々の間で、真に受け入れられ、活かされていくための問題について、改めて考えさせられるできごととなりました。 |