@ EARTHWORKS NEWS - No.28 '99/01/14
三町長会議を開催
 ◇ 協議内容
  • 中山間ソフト事業の内容検討
  • アースワークの長期的な展望
  • 臨時総会の開催決定
 1月6日、三良坂・吉舎・総領の町長が三良坂町役場に集まり、アースワークプロジェクトが当面する課題について協議しました。
 まず、アースワークプロジェクトが県の補助事業である中山間ソフト事業の対象に決まり、今年度、来年度で取組む事業について次のとおり確認しました。
 1つは情報システム構築で、各町二台ずつコンピューターを設置し、濃密な情報交換、情報発信を行います。  2つ目は、環境美術館の設置です。小さな美術館の基本的な見本を2年間で6つ、各町二つずつ設置し、観光資源、各町をまわる観光ルートの創出につなげていきます。
 3つ目は灰塚ダムのキャッチフレーズ、マークなどの準備を進めます。
 4つ目は周辺環境整備計画の灰塚大橋、羽地大橋、ゴルフ場の提案業務です。
 周辺環境整備事業とアースワークプロジェクトの今後については、3町長から次のような指摘を受けました。
 三良坂町長 周辺環境整備事業の規模や概略をできるだけ早く発表していく必要がある。将来的な目標・共通イメージも必要。観光資源となるような物をつくらないといけない。
 吉舎町長 建設省へどんどん提案していくことで、できないといわれていることが可能になることもある。
 総領町長 費用は建設省、知恵は3町というスタイルで進めているが、建設省に我々の要望にきちんと応えてもらっているかどうかチェックしていかなければならない。
 続いて三セク問題などを話し合った後、中山間ソフト事業に伴う補正予算などについて審議するため、臨時総会を1月19日に開催することを決めました。

三良坂町周辺整備計画、協議本格化!
 〜2001委員会を中心として〜
 年末に、灰塚ダム対策同盟会、2001委員会、三良坂町企画課による会議が開催されました。
 この会議で、(1)三良坂町企画課が地元意見の集約窓口となること、(2)同盟会(4名)2001委員会(6名)の代表者で計画の具体的な協議を続けていくことが確認されました。
 昨年度の吉松氏の提案を中心に、三良坂エリアの周辺環境整備計画をまとめていきます。

春植物の保全管理ボランティア育成教室
 三良坂町では昨年、水没予定地のセツブンソウやカタクリなどの貴重植物の移植を試験的に行いました。今後は小塩野地区で本格的な移植保全に取り組む予定です。  それに先立ち、貴重植物の保全管理や育成のための勉強会が開催されています。次回は2月21日・3月28日に、三良坂町中央公民館で行われます。お問いあわせは三良坂町役場企画課(Tel 0824-44-3111)へ。

動き出した周辺環境整備
 ◇ 建設省は道路整備を重点に
Zoom!  ダムの工事が本格化しています。現在、建設省は道路整備を重点的に進めています。整備箇所は地図の通りで、この一部を撮影してみました。  写真で紹介している二箇所の他に三良坂町のハイヅカ湖畔の森などの建築デザインも、アースワークプロジェクトの視点から評価できるものとして位置づけています。  これから具体化が計画されている周辺環境整備事業は、三良坂町のダム堤体まわりの周遊プラン作成、吉舎町の雑草ゴルフ場の植栽実験調査、総領町のアースワーク公園と副ダムの設計です。設計者と地元の方との会議、三町と建設省との会議などを通して内容を詰めているところです。詳しい内容は決り次第お知らせしていきます。

法面の基本は『緑化』
Zoom!  道路建設に伴い山肌が削られ、法面があちこちで出てきました。建設途中にある道路法面の今後は?建設省の景観整備計画(案)によれば、基本的には緑化が計画されています。
 しかし人目につかない所で、すでにコンクリート吹き付けやブロック積みが実施されている箇所もあります。今後も積極的な緑化へ向け建設省へ要望していくこととしています。

アースワークプロジェクトが活かされた箇所
 ◇ 木屋地区周辺整備【総領町】
Zoom!  1997年、木屋地区地元検討委員会の立ち上げから、建築家堀正人氏も加わった協議を経て、むかしの畔のかたちを活かしたデザインが施されている整備。
 検討委員会で協議され、法面を少なくするための林道の路線変更は、新聞でも大きくとりあげられました。
 ◇ のぞみが丘無縁墓地【三良坂町】
Zoom!  1997年サマーキャンプから、具体的な課題として建築家吉松秀樹氏により検討され、地元ヒアリング及び説明会を経て設計・施工されました。
 垂直に伸びるステンレスの棒と墓地の奥に 移植された「タラヨウ」の木が特徴で、無縁仏の遺骨が埋葬されています。

アースワークプロジェクトの進む計画案
 ◇ ひまわり護岸【吉舎町】
Zoom!  1997年アースワークスクール活動の一環として、安田小学校の子どもたちと整備案について協議を行ってきた美術家岡崎乾二郎氏デザインによる護岸。
 昨年開催された「アートスフィア灰塚 '98」の舞台として活用されました。本格的な整備が待たれています。
 ◇ 知和大橋高欄部分【吉舎町】
Zoom!  1997年から、加村橋及び各種橋梁に関し、勉強会やワークショップを行ってきてくださった建築家福井裕司氏デザインによる高欄。
 蛍の里を舞う「光り」をイメージした流線型の形は、夜の幻想的な灯火とともに昼間も楽しめるよう配慮されています。

シリーズ「アースワークの5年間」
 ◇ 地域の活性化の中から誕生
 今年で6年目を迎えたアースワークプロジェクトにたくさんの方々が関わってくださいました。昨年就任された森山所長さん、催しに参加された岡本さんから、5年間の成果を評価した励ましの文をいただきました。
 このシリーズでは、アースワークのそもそもの始まりから、どのように展開していったかを振り返っていきます。
■□■
 灰塚アースワークプロジェクトが産声をあげたのは、1994年の1月です。ちょうど生活再建地で住居の新築工事が始まったころです。
   灰塚ダムは里ダムと言われ、水没戸数は332戸にもなります。洪水時にしか水がこない高水敷と呼ばれる面積が広いことも特徴です。河川法で建物を作ることができない、この高水敷を活かす方法はないかと考えるうちに、大地を対象とするアースワークという芸術の発想が出てきました。
 その背景として地域の活性化に取組む3町の姿勢があります。ダム建設を過疎化や自然破壊のマイナスイメージからプラスに転換する発想です。国の水源地域対策特別措置法に指定された後、3町が共同で作成した再建実行計画にはダムエリアを7つのゾーンに分け18のメニューがのっています。現在、周辺環境整備事業として個々の計画の具体化を進めています。
 こうした基本の流れの中でアートから環境を考えるという環境芸術活動を展開してきました。
 ◇ アースワークに関わって − 全国的にも珍しい活動
江の川総合開発工事事務所所長 森山利夫 
 灰塚ダムは、県北地域の治水、利水の両面を担うダムとして建設されていますが、併せてダム周辺の環境整備も進めています。また、地元三町では、ダム建設を契機にアースワークという環境芸術の考え方を導入し、地域づくりを進めています。
 近年のダム建設では、いずれも周辺整備を行っていますが、芸術を活かして周辺整備・地域振興を行うことは、全国的にも珍しいと思います。
 建設省としてもこのアースワークの考え方を取り入れた環境整備を行うとともに、地域の意見を聞き、地域に開かれ、自然環境や文化に調和したダムづくりを進めていきます。
 ◇ アースワークに関わって − 地域で活かされるアート
広島市現代美術館学芸員 岡本芳枝 
 PHスタジオの「灰塚アースワークプロジェクト 船をつくる話」シンポジウムの席上で最も心に残り、今も考え続けていることがあります。
 三良坂町の方の発言で「ダムができると植物が水に浸かる。カタクリの花を助けようと60歳を超える女性たちが数十人集まって皆で移植したこともある。本当にいいプロジェクトだと思ったら、『森のひっこし』を合言葉に、木を使った船くらい、自分たちですぐできる」といった内容でした。
 私自身は「現代美術」を専門とする「美術館」の中で、ワークショップや参加型のプロジェクトを企画しているわけですが、アートが地域やそこに暮らす人々の間で、真に受け入れられ、活かされていくための問題について、改めて考えさせられるできごととなりました。

アート INFORMATION イベント
山田アサヨ 紙人形展
1月19日〜1月31日【月曜日休館、午前10時〜午後5時】
吉舎町内書初め展
2月2日〜2月21日【月曜日休館、午前10時〜午後5時】
あーとあいきさ 一般300円 高校生以下無料
竹田茂展
12月23日〜1月31日【火曜日休館、午前10時〜午後5時】
川佐あけ美展
2月1日〜2月28日【火曜日休館、午前10時〜午後5時】
Xa104 入場無料


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