@ EARTHWORKS NEWS - No.30 '99/03/15
みんなが行きたくなる湖に
 ◇ アースワーク宣言 9月5日実施予定
 ダムが完成した時にできる大きな湖−里山の風景が大きく変ろうとしています。
 営々と育んできた文化や環境の破壊を最小に押さえ、新たな地域資源として、誰もが行きたくなるような場所にしよう、とダムの環境・周辺整備に取り組んでいます。
 後世に残せるダムづくりを実現するためには、建設省、三町、地域住民、関係者が共通のイメージを持って進めることが大事です。
 その要となるのがアースワーク宣言です。
 アースワークプロジェクトでは宣言の内容を提案し、建設省と検討を重ねています。
 宣言に盛り込まれる内容項目(案)は次の通りです。
  1. 宣言の主体
  2. 宣言の目的と対象
  3. 灰塚ダムの位置付け
  4. ダムづくりの基本姿勢
  5. ダム環境整備の基本方向
  6. ダム環境整備方針
  7. アクションプラン(行動計画)
  8. ダムエリアのイメージアップ
  9. ダムエリアからの情報発信
  10. ダムづくりの推進体制
 宣言の実施は、9月5日(日)の予定です。同時期にアートスフィア灰塚 '99、流域の市町村が集まる江の川文化圏会議総領サミットも予定されています。

CI計画 − 共通のイメージづくり
 交流人口の獲得や地域の共通イメージをつくるためにも、ダム湖の名称やキャッチフレーズ、マーク、キャラクターなどを決め、サインやカラーなどを統一していくことが重要です。
 広島県の中山間ソフト事業にも採択され、現在進めているCI(コミュニティ・アイデンティティ=地域の認識・イメージ周知)計画の中で具体化していくことになります。
 今年度は、地域イメージの基礎調査や何を取り入れ、どのように公募するのか、またどのように展開していくのか、といった内容をまとめていきます。
 様々な会議の席で計画概要の説明をし、みなさんのご意見を聞いているところです。

風景になじむガードレールに
 ダムエリア内のガードレールは、基本的には白いガードレールを使わず、風景になじむ色の塗装を施すことが決まりました。
 事務局で、濃い緑や茶、グレイ、ベージュなど六色の候補を選び検討している所です。
 また形もできるだけガードパイプ型にしてほしいと要望しています。
色彩の決定は、地元の人たちも参加する中で、現地で実際に各色を塗ったガードレールを比較し決めるイベントのような形が取れないかと建設省へ要望しています。

三町でアースワークスクール開催
 ◇ 仁賀小・安田小「自分の宣伝看板を作ってみよう!」
Zoom! 2月5日に三良坂の仁賀小学校、6日に吉舎の安田小学校で行われたスクールのテーマは「自分の宣伝看板を作ってみよう」。頭が入るくらいの段ボールの箱を、切ったり、貼ったり、色を付けたり。後でかぶったり床に置けるように工夫しました。
 5日には岡崎乾二郎さんの指導を中心に、「自分を身近な何かに例え、それを形にする」ことで独特な宣伝効果をもつ看板づくりに取り組みました。
 6日は、木原進さんを中心に、売店やランドセルなど機能をもったものや、カメラや動物など動きや仕掛けを持った看板ができました。
 ◇ 総領小「ゲームの中に入ってみると‥‥」
Zoom! 「テレビゲーム」に負けないコンピューター演習とは?
 2月18日に、総領小学校コンピュータークラブで講師をしてくださった丸井隆人さんはそこから考え始めました。
 そして「ゲームの中に入る」と題し、面白いポーズをデジタルカメラで撮影。出来た画像データを加工し、コンピューターゲームの気に入った場面の中で合成しました。
 一人ひとり自分の写真画像を、様々なフィルターを使って加工し、色を塗ったり、形を変えたりして楽しみました。
 ◇ 灰塚小「雪の中で化石づくり」
Zoom! 最近では珍しい大雪に包まれた2月5日。真っ白な灰塚小学校で、「雪の型を使った化石づくり」の演習が行われました。
 最初は粘土で、自分の彫刻作品をつくり、それを雪の上に落として雪の型をつくります。そこに石膏を流し込んで、春を待ちます。この演習は、昨年の安田小学校に引き続き岡崎乾二郎さんの指導で行われました。
 「先生こんどはこっち!」という声に、石膏で真っ白になりながら先生も大忙し。雪と石膏の白さに惑わされ「踏んじゃった」という場面も‥‥。
 始めは寒がっていた子供たちも、自分の体や顔を雪に押し付け型を作り、そこに石膏を流し込んでいました。
 春になって、白い石膏がもともと何だったのか?いつのまにか化石ができ上がります。

シリーズ「アースワークの5年間」
 ◇ アースワークに関わって − 水と人を架けるアートに
建築家・建築ジャーナリスト 岡部明子 
 夏に二週間ほど、灰塚で五歳の娘とともに過ごした。アースワークと関わっている夫の堀正人に付いてきたためだ。
 昼寝から覚めると、田総川沿いを二人でお散歩する毎日。他にこれといった日課はない。最も印象に残ったのは、腰まで水に入り作業をしていたおじいさん。川から上がってきたところ、何を捕っているのかと尋ねると、「うなぎ」。日焼けした顔を笑みでくしゃくしゃにし、子どもの頭にポンポンと手をやった。人は水と深く付き合っていれば幸せなんだなあ、と実感した。
 だが、ダム事業は人と水の領域を一本の線で否応なしに仕切る。この線より下では人の営みを排除するというふうに。
 アースワークには、狂わされた人と水の関係を繕おうとする姿勢がうかがえる。岡崎氏のアースワーク公園は、河川区域という線引きへの挑戦に始まっている。失われた水田がアートに生まれ変わり、人と水の幸せな関係が蘇ってくる。
 農業生産だけでは、里山の営みはもはや守れそうにない。灰塚アースワーク活動が興味深いのは、里山の地に文化的価値を見出だそうとしている点だ。
 アースワークの息吹で水と人がせめぎ合う場が守られ、ダムができても「うなぎ」の笑顔を再び拝めることを祈っている。

中山間ソフト事業
 中山間ソフト事業として三良坂では灰塚大橋周辺、吉舎では知和地区周辺、総領では羽地大橋周辺のデザイン調整が進んでいます。
 またCI計画も地元説明が始まりました。
 ◇ 三良坂町「灰塚大橋の高欄デザインを検討」
 三良坂町では、ダム周辺整備について、周辺整備等検討会や2001委員会で随時検討されています。
 2月15日に行われた検討会では、建築家吉松秀樹さんによる灰塚大橋高欄デザイン案が提出されました。
 15mmのガラス板にサンドエッチング(砂で絵柄を彫る方法)で植物やマークあるいは言葉などを彫り込み、その板を既成高欄の外側に取りつけるという提案でした。
 デザイン画に「できたら凄いけど、難しいんじゃないか」といった反応がありましたが、高欄メーカーと協力しながら、難しい点を克服していきます。
 またダム名称として「どんここ」という提案が出されるなど、CI計画についても共通イメージを皆で探ろうとしています。吉松さんから概要が示され、次回はデザイナーの方を呼び話をすることになりました。
 ◇ 吉舎「高水敷の利用法」
 吉舎町知和地区の整備計画検討業務を担当している、杉本事務所杉本隆さんと及川康江さん、ランドスケープ(風景づくり)を専門とされている宮城俊作さんと吉田新さんが、2月23日現地を視察しました。 とみしの里で行われた打ち合わせでは、知和地区に残される高水敷の利用法として再建実行計画の雑草ゴルフ場案を踏まえながらその利用者の幅を拡げる方法について議論しました。
 「人と環境にやさしい」場所として雑草・自生植物を積極的に利用し、誰でもスポーツが楽しめるような場所にできるよう全体の方向を再確認しました。
 ◇ 総領「田総の里で振興計画」
 2月17日に開催された田総の里自治会会議では、自治会による振興計画書案のアンケート実施方法や本文の具体的な表記などについて協議されました。
 今年度中に印刷発行まで行い、新年度の総会で、アースワーク公園の具体的な模型とともに振興計画の説明を行っていくことが確認されました。
 また、CI計画の説明も行われました。

お知らせ
2月20日(土)と21日(日)に予定されていた春植物の移植については、19日(金)の大雪のため延期されました。
 次回の春植物移植は吉舎町分3月20日(土)と三良坂町分21日(日)に行われます。
 21日の三良坂町大谷地区では、アヤメなどの苗1500本の植栽が行われます。

身近に小さな美術館
Zoom!  中山間ソフト事業に伴う環境美術館設置(小さな美術館)の準備が進んでいます。

◎ 本年度のプロトタイプ(代表例)
  1. 作品自動販売機
    中古の自動販売機を加工して、通常は小さなギャラリーとして作品鑑賞ができ、同時に手軽に小さな作品(版画、小彫刻など)が購入できる機械にします。
  2. ジオラマ美術館
    譲り受けている酒造タンクの中に、360°見渡せるような風景写真・絵画を展示し、外から覗ける仕組みを作ります。
  3. 風景を見る装置
    透明なシートに描かれている絵を透かしてみると実際の風景を様々に変えて見ることができる装置づくり。


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