Summer Camp 1995
Lecturer: Nancy FINLEY
ナンシー・フィンレイ
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Master plan
 - ミクロな視点に立つマスタープラン
  相手の意識を見ること、自分の意識を高めることを意図する。つまり実際的なデザイン以前に、ミクロな視点での体験(physical experience)と観察(observation)を試みる。そこから人間と生物、さらに環境とのつながりを生み出すものである。
 - 調査
  水(water)、居住(dwelling)、植生(vegetation)の詳細な case study を行う。
調査場所には常時満水位とサーチャージ水位との間のゾーンがが選ばれた。普段は荒れ地、あるいは空き地とも呼ぶべきゾーンである。このゾーンは我々のマスタープランにとって重要な意味を持つ。ダムが建設される将来も、このゾーンは日常的には河川敷のままである。まだダムは建設されていない。だが、この土地から立ち退いた人々がいる。意識下で、捨てても良い土地というネガティブなイメージができつつある。
だがこのゾーンを観察すれば、まだダムになっていないという事実を意識させるような、生きた生活の存在がある。その存在は、それ自身この地でのポジティブな抵抗であり、その存在は、この場所との強いつながりによって成り立っている。
ミクロの視点での観察と体験をすることが我々の思いこみを抹消し、現実を認識させてくれる。ダム建設に対して、今なお抵抗している存在から希望が見えてくる。

Site installation
 - 敷地(トポグラフィー)
  マスタープランに基づき、ミクロの視点で両生生物のいる場所が選択される。
2つの谷間から流れ出る湧き水が一筋の流れとなり、車道の下をくぐり、田総川、そして上下川に至る。その流れは居住地、つまり空き地から、鳥居の佇む道のあたりまで、小道に沿って流れている。その湧き水に挟まれた山間に神社はある。いまでこそ雑草の生い茂るゾーンであるが、それは「龍の道」を形成する湧き水である。
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 - インスタレーション
  我々はこのゾーンの雑草を刈って道を作り、巣−残余のオブジェを作った。河原から竹を切り出し、源を作った。竹の基壇の中に土を入れ固めた。藁で座布団をこしらえた。全てを我々の手で作り、全ての材料を捨てることなく生かした。
これらの地道で手堅い労働は地元の方々の協力なしには生まれなかった。この土地に生まれ育ち、この土地とのつながりの上で生計をたてている魅力的な方々の仕事から、体験することの重要性を学んだ。ともに行った労働、それ自体が我々の positive な抵抗である。
  Site installation の場に立つ。せせらぎの音とともに両生生物の存在を認識するだろう。我々のイベントは、毎年このゾーンでインスタレーション的な催しを繰り広げ、地元の方々との協力のもとで、行き届いたメンテナンスを行っていくことを意図している。
それは、よりミクロスケープな site installation の誕生である。

  協力して下さった多くの方に感謝いたします(敬称略・順不同)。
矢吹正直、中井節夫、池田好幸、田辺 峻、堂前和宏・陽子、平田英吉、山口さん(トランペットを吹いてくれた息子さん)、山根啓荘、伊達浩史、渡辺英俊、中本政男、吉野留弘、山崎豊明、谷本 忠、・・・他にもここにお名前を挙げることのできなかった数多くの方々に感謝いたします。


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