Workshop 1994
Guest Artist: OKAZAKI Kenjiro
岡崎乾二郎
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基本的な課題
  いるかいないか、わからないもの。あるかも知れないが、すぐに確かめることのできないもの。確かにあるけど、めったに現われぬこと、見ることや触れることのないものをいかに配置し、現在の生活の条件に組み込んでデザインするか。
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  1. はかなく曖昧すぎて日常の経済尺度におさまらないもの、時間間隔が長大すぎるか、あるいは滅多に起こらない事柄。配慮すべき領域が巨大すぎる、あるいは微小すぎる事柄や事物。
  2. 洪水などの災害、ダルマガエル他の稀少動物、節分草などを含んだ自然環境。歴史的な遺物、そしてお化け。

提案1
 ○ 河川敷に人工島を並列して設置する
  ダムの湖底面、河川敷という人工的に決定された氾濫域―つまり、放任、自由に放置された自然状態 ―おもに湿地帯に一つのポジティブな意味づけを与え、自然の潜在的な能力、特にその自生力を生かすデザインをする。
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 ○ 形状
 
  1. 自然石の荒積みにより形成、標高250m以上は竹その他クヌギなどの落葉樹林の植生を作る。
  2. 人工島の間は渓流が流れ、谷の中の谷、川の中の小さな川のように見える。
  3. 補助的に、二つの島のいずれか一方にしか行けない観測所を設ける。
 ○ 機能
 
  1. 人工島の間には、比較的速い渓流が流れ、清流を形成する。セキ(小川)の数カ所から蛇行水路が流れ、下流域が湿地帯となる条件を整える。サンショウウオなどが必要とする清流、林を用意する。
  2. ダムの水質の淀み(養分の過剰蓄積による)を防ぐ、カワセミなどの鳥類が寄り付く条件を整える。
  3. 周辺道路と堤によって、一方向に長く閉鎖化しがちなダム空間に対して、拡がりを与える。
  4. 湿度、温度、水質、土壌などに対するセンサーを設置し、生息する動植物の状態を表示する。
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 ○ 付加的な装置 - 放置された自然に対する魅力づけの装置
 
  1. 設置したセンサーに対応し、100年に一度の確率で自然発生する可能性のあるプラズマボール(火の玉)を鑑賞できるようにする。
  2. また、簡単な人工的なプラズマボール発生装置によって、1年に1回から2回ぐらいの確率で火の玉を発生させることは可能である。
  3. 火の玉発生に伴う電波の発生を防ぐため、電波を吸収するパラボラアンテナを要所に設置する。火の玉発生時は、一時的にあらゆる電波は吸収される。
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提案2
  稀少生物をキャラクターにした、棲み分けを基本的なアイデアにしたストーリーを作り、アニメーション、絵本、コンピュータ・ソフトなどを作る。
カスミサンショウウオのかすみちゃん、ダルマガエルのたるまくん、モズクガニのもずくちゃん、クヌギのくぬぎくんなど、実際に灰塚に生息するものからキャラクターをとりあげている。
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  キャラクター同士はお互いに相手のことを知らない。これは棲み分けを意味している。また、それぞれが持つ生態をキャラクター化し並列することで、時間軸や生活空間をあらわそうとしている。
  もし、たるまくんの視線からかすみちゃんを見た場合、かすみちゃんはカスミサンショウウオの姿には見えないかも知れない。それは、他のどの動植物の視点から見ても、互いに同じような現象が起きる。それが、時たま現われるカスミサンショウウオの仮の姿としての少女かすみちゃんの設定である。
そして、この生き物たちは日常どこかで出会っているにもかかわらず、互いの存在に気づかずすれちがっているのである。


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