Workshop 1995
Artist: Vadim ZAKHAROV
ヴァディム・ザハロフ
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水上座人 - 水遊思考派
  「水上座人」計画を提案します、これは広大な敷地に独立した一種の学校を作るという目的を持っています、内容は変化にとんだ様々な分野をもとにしていて、学校はその基本原則を多領域的でかつ「浮遊した」ものである、と定めています。そのためにこの学校は名前を「水上座人」といいます。
この学校計画がうまれたきっかけはそもそも「灰塚アースワークプロジェクト」グループの活動によります。今までで次第に明らかになったのは──このグループがダム建設というすでに与えられた枠にとらわれずに活動しているということです。 学生やボランティアの協力で何年もかけてつくられた計画や作品、それにまつわる国際的な背景、細かく記録された資料などは、グループの作品としてはまだ物足りません。実際のところ残念なのは、一年に一回だけ集まって活動が進められていることです、我々はもっとこの組織が機能的であるにはどうしたらいいのか考える必要があります。さらにすでに、今の段階でこのグループの存在の最期の瞬間はもう決められています──それはつまりダムが完成したときまでなのです。
そんなわけで「灰塚アースワークプロジェクト」グループを、独立した一つの学校、になるように構造的に改造することを提案します。
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  ここでの仕事はまず計画の立案とその実際の実現の間をどうやってつなぐのかということから始まりました。言うまでもなくこの連結のために最も重要なのは、グループのメンバー一人一人の「気持ち」です。例えて言うなら、
「もしかしたらそれに対して…何かするのか?何かできるのかも‥‥?」
というような質問はもうやめて
「おい、もう仕事はお開きにしようや、夜中の三時だっていうのに」
といった断言をするべきなのです。
こうした立場の変更は、もうほとんどグループのメンバーの「関心」だけにかかっています。そしてこうした「関心」の一側面は遊びやそれに派生する笑い、さらに付け加えるなら伝統に基づいたものなのです。
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  この計画においては、重点は笑いと伝統に置かれます。笑いは私の二週間のここでの全ての制作に伴うものでした、そしてこのことは私の制作活動における重要な点の一つです。伝統は学校の内容に影響を与え、それにまつわる神話、歴史的な物語を作りました。水没する広大な敷地、移住しなくてはならない多くの人々、新住区の建設などこうした今の灰塚地区の全ての条件は、世界が神によって造られた創世期と比較できうるような環境であると言えるでしょう。こうした状況が我々の将来における学校を生み出させるのです。私たちが制作現場に選んだのは、半年前に廃校になった実際の学校で、私たちはここを「たった五分間だけ」「私たち自身の」学校にしようとしました。
残されていたものといえば、歴史、師匠と門弟のノートなどです。
よく知られたマルセル・デュシャンの手法(ごくありふれた既製品を違った環境のなかに投げ込んでやるやり方)を私はここで用いていて、カーテンの留帯を門弟や師匠の襟章にし、校庭にもとからあったロダンを真似た彫刻を学校の守護神にしてあります。
(訳文:松原弘典)


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