Summer Camp 1996
Guest Lecturer: FUJI Hiroshi
藤浩志
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>> Base Plan - 構想作品
[ハイヅカミュージアム構想]=[101匹ヤセ犬の犬小屋計画]
 〜ダム湖周辺に101種類の作品(建築物あるいは美術作品)を配置する計画
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  • ダム湖に面する回遊道路に面して例えば約3坪程度の敷地に同量のボリュームを持った様々な魅力的な構造物(建築物あるいは彫刻?)を101人の建築家や美術作家に構築してもらう。ダム湖全体が101人の建築家あるいは美術作家の作品を常設しているミュージアムとして機能する。
  • その作品のどこかに(ある場合は構造物の中にあるいは距離を保った外側に)ヤセ犬を、そこに常駐しているウォッチャーとして潜ませる。
  • ヤセ犬は何を見たのか?
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  • 計画期間を33年間と設定し、毎年ハイヅカに面する3つの町がそれぞれ一つづつ公募などにより具体化した計画を実現してゆく等の長期にわたる計画とする。毎年3つの作品ができてゆくとして33年間で99種類の作品が完成する。
  • 計画を始める段階に必要な運営の為の核となる施設と「ハイヅカスクリーン」の2つを加えて101の犬小屋が完成する。
  • その作品は機能を持つ場合もあれば、機能をも作品化された空間、あるいは機能を持たないアートとしてのみ成立する場合等も様々に考えられるが、基本的にはコンセプトも含め各作家にゆだねられる。
  • 33年で世代が交代するのと同様に101の犬小屋が完成する時にはすでにはじめの作品は老朽化していることが予測される。33年目以降はそれぞれの作品を作り替えるか、残すかの選択も含め、さらにハイヅカミュージアムの充実が毎年計画され、それぞれの時代に対応して変化し、ハイヅカミュージアムは世代を越えて受け継がれてゆく。
  • その変化を101匹のやせ犬は恒久的に見つめ続けるのだろうか?
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可能性の象徴としてのヤセ犬の話(藤 浩志「野豚を追うヤセ犬」より)
  • パプアニューギニアの村で見かける、そのヤセ犬達は、病気で毛がちぎれ、ハゲハゲのがりがりで卑屈な眼差しがやたらと印象的だった。決して人間に媚びることをせず、与えられることをせず、人目を避けるように人間と共生しているその犬達には、先進国諸国で豊かに暮らしているような「飼い犬」のような生温かさはなく、かといって自ら獲物を捕らえる「野犬」のような鋭さもない。単にボロボロのぼろ雑巾のようなヤセ犬だった。
  • ところがそいつらが一年に数回だけ、村で特別な儀式とか祭礼とかがあるときに、人間達といっしょに野豚狩りにでかける。人間の仕掛けた罠に獲物の野豚を追い込むのがヤセ犬達の仕事なのだという。村人達は特別な儀礼の時だけ豚を食べる。その食べかすがヤセ犬達にとって唯一の御馳走であるらしい。
  • 私は走る姿すらも想像できないそのヤセ犬達が、野豚を追っかけるなんてとても無理だろうと思っていた。しかし私はそこですごいものを見てしまった。
    そのヤセ犬達が野豚を見つけた瞬間すごい! 全身にエネルギーが満ちあふれ変身してしまった。そしてまるで猛獣のように猛然と、一斉に、すごい勢いで野豚を追い始めた。
  • その姿があまりにもすごくて、私の体は思わず震え始めた。私の脊髄に何かが走った。感動で涙が出るほど「美しい」と思った。


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