HAIZUKA EARTHWORKS PROJECTS 1996
Seminar / Student's Works
自由ゼミ
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1996年度 サマーキャンプ
  今年で3年目を迎えた灰塚アースワーク・プロジェクト、サマーキャンプは、過去2回にわたって蓄積された経験とそのアイデアが、よく継承され、キャンプがはじまるとすぐに、参加者の皆が、スムーズにこの環境に溶け込み、本格的な作品制作に入ることが出来たようです。
今年、わたしたちが期待したのは、過去にもまして、よりいっそう具体的に、この環境を積極的に活性化する作品だったのですが、その意味で、われわれの期待をはるかに超えて、非常によくこなれた作品が作られました。特にほとんど自主的にプロジェクトを進めた学生参加者(自由ゼミ)の作品の完成度の高まりは、ほとんどわたしたちを驚嘆させるものでした。
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  このプロジェクトの目的のひとつは、このサマ−キャンプに代表されるように、ア−ティストが次々と新たに生み出され、この地域環境全体が美術大学に代わるひとつの新たな教育の場として生まれ変わることでした。今や、わたしたちは自信をもって、すでにその目的の半分は達成されつつある、と言うことができます。
次の課題は、今、最も美しい自然環境を見せている、この地域にこれから訪れる環境の急激な変化に対して、より具体的な有効性と、ひとの心を動かす魅力を備えた提案を、可能な限り、たくさん実現していくことでしょう。過去の姿を追憶したり、過剰に防御的になるのではなく、わたしたちは、環境──自然と文化がもっている、もっとポジティブな生産力を芸術を通して引き出したいと思っています。
人間が環境に働きかけるのではなく、むしろ環境こそがそこに住む人間に働きかけ、何かを教え、思索を深める、つまりとてつもなく大きな可能性をもった教育機関なのだということを、わたしたちは確信していますし、だからこそ、これからも実証していくつもりです。
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地灸(大地の痛みのためのインスタレーション)
  すでに年間を通して、地域に開かれたア−スワ−クゼミもスタ−トしています。サマ−キャンプに続くワ−クショップでは、元ダム相談室がその専用施設としてのアトリエとして作品化される計画がスタ−トします。来年度は、以上のことを引き継ぎ、いよいよ、すべてのプロジェクトが本格的に軌道にのることになります。
岡崎 乾二郎(コーディネーター) 

学生参加について
  様々な分野から集まる学生をどのように位置づけ、サマーキャンプのわずか10日間で一体何を提供し、どう作業をすすめていくのか?というのは、今年の大きな課題の一つでした。
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  昨年のサマーキャンプでは、あらかじめ参加作家の方々にプランを考えてもらい、学生の自主的な選択によりその実現を手伝ってもらうという方法でおこないました。参加学生は日頃やらない力仕事から様々な工具や道具、機器を使っての作業に、戸惑いながらも様々な方法でこの作業について、あるいは灰塚について考え、実践するということを行ってきました。このやり方は、みんなで力を合わせ一つの目的に邁進し、何かを達成するということでは十分キャンプの意味を担っているのですが、その分参加した学生が自由に考えたり、自分の作業をおこなうということは時間的にも体力的にも無理がありました。
そこで、今年は作家の方々と同じ立場で、同じように授業を受け、同じように時間と場所を用意してみるという試みをおこなうことにしました。
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  途中、授業も終わり、ダム関連地をバスで巡ったあと、皆しばらく放心状態に陥っていたようですが、同じ状況下で、白井さん藤さんが淡々と作業を進められている様子に引きずられるように、少しずつ自分のやるべきことを見つけていったようです。ある人は他のやるべきことも含め、中途半端になってしまうという危機感から会期半ばでこの地を去り、またある人は一旦決めたプランを途中で思い直し、完全に変更したかたちで作り直すという過程を経ていました。昼の暑さにもめげず、広大な雑草の生い茂る空き地に足を運び、草刈りをしていた人や発表会の前日、ブレーカーを落としながら深夜遅くまで制作をおこなっていた人。最後の最後本当に駆け込み的にこの灰塚という場所と向き合った人など精神的にも肉体的にも楽に最終日を迎えた人は少なかったのですが、そのかいあって素晴しい発表会となりました。
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  見学に来られていた方々にも好評で、最後のパーティの席では「芸術イベントでこれだけ成功している例はない」との賞賛までいただき、余りの受けのよさに事務局の方が戸惑ってしまったぐらいでした。
山吹 善彦(参加アーティスト・事務局) 


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