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− はじめに −
 灰塚アースワークプロジェクトは、ダム周辺整備事業によってつくられる環境に、圧倒的な付加価値を与えることを第一義の目的としながら、この活動の展開と定着を進めることで、灰塚ダムエリア外をも含んだ関係地域全体に、都市にも先んじる深い文化性をもたらし、青年層を中心とする人口の定着を確実なものにしようとするものです。
  • 環境(自然、人間の文化を含めた)全体を作品として形成する。−環境を生かし、環境の中に潜在的に眠っている魅力を引き出し、人々がその環境に隠されていた魅力と触れ合うための仕掛けとして作品がある−従来の芸術作品のように環境にするどいコントラストを示す、自己完結した個人表現ではない。
  • 環境の中で作品を作りあげていく過程や人々が作品と触れ合うその過程自体が作品の重要な内容、意図となる。作品はつねにワークショップ的な教育的価値をもち人々のつながりを作り、環境学習の装置となりうる。
  • 作品は、単なる鑑賞の対象であることをこえて、具体的な機能を持つ(橋やベンチや釣り場所、など)。
 つまり、アースワークは、単なるアーティストの個人表現なのではなく、環境との関わりかたを考え、ひいては、積極的に環境そしてコミュニティを豊かに再生させていくことを試みる芸術活動というわけです。作品ないし制作活動は、豊かな環境・景観を形成し、それと親しむための装置としてあります。(1997年度作成「灰塚アースワークプロジェクト事業計画書」より)
 灰塚アースワークプロジェクト実行委員会は、以上のような特性を備えたアースワークの方法を、灰塚の環境・文化全体の形成を目指し、人々が協同して環境・景観を作り上げていく手法として展開し、そしてそのユニークな芸術性によって国際的な情報発信性を地域に備えさせるための中心的な装置として位置づけ、活動を実践しています。
 本年は、キャンプ開始直前からの『アースワーク展覧会』(関係者の提案・作品展示)の開催、サマーキャンプ中の『みんなの橋を語る会』の実施、イベント的な目玉としての『地灸』などを用意することで、より広範な地域への浸透をはかりました。
 サマーキャンプでは、約30人の参加者による様々な討議や勉強会、制作活動を経て、最終日にはオープンスタジオとしてその成果を発表しました。全ての参加者が、時間の限られたなか、創意と工夫によって、地元の方々と積極的に関与しながら個々の考え方を作品として実現させていきました。
 そして現在、その苦労とともに、この灰塚での思い出を、参加者各々の所属する場所で、発展・展開させてくれていることでしょう。
 われわれは、環境と芸術との関係を考えるという画期的な灰塚の取り組みについて、地元住民の理解の促進にとどめることなく、この取り組みが重要な視点・考え方を内包しているという認識のもとに、社会全般に広げていく活動として継続していきたいと考えております。

1997年10月7日    灰塚アースワークプロジェクト実行委員会


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