灰塚アースワーク・オブジェクト表(アートスフィア灰塚 '98・中谷ワークショップ)
ここで紹介するのが、灰塚アースワーク・オブジェクト表、いわば今年度の灰塚の文化財指定基準です。灰塚の文化財を探すという作業を行おうとするとき、ついつい灰塚らしさとはなにか、という問題の立て方をしてしまいがちです。しかし、この「らしさ」というのがくせものです。中谷ワークショップでは、ここから出発するのではなく、概説で紹介したように、まず灰塚にゴマンとある面白い物体をワークショップ参加者各人の目でひろいあげる作業からはじめることにしました。
さて、制度化されている文化財は、国、県、市町村と、みな同一の構造からなっています。その頂点にある、国の文化財のしくみを示したのが、この図です。国の文化財というものは、日本の文化を代表するものとして、いわば日本「らしさ」を表現したものといえるでしょう。ここにあげた図を見ると、文化財がピラミッド状に分類され、限られた価値観によって選ばれていることがわかります。
しかし、どうも違和感を覚えずにはいられません。ものの価値は、これほど明解に分類できるものなのか?そして、文化財において「らしさ」を規定する人とはいったい誰なのか?よくわかりません。「らしさ」なんていうものはあやういものです。
物体の価値は、その物体を観察する人の視線によってつくられます。そして、その価値は有限ではなく、無限にあるはず。これが今回の中谷ワークショップの基本的な立場です。各人が自らの見方によって、灰塚にある物体に新たな価値を見出したときにうまれるものを、灰塚アースワーク・オブジェクトと呼んでみました。
しかし、個人の視点は、それを客觀化しないかぎりは、なにも見えていないに等しいのです。そこで、ここに一つのルールを設けました。参加者各人の見方を、灰塚のものの価値を計測する方法として、ほかのどの人にも利用可能なかたちで提示すること。
こうして生まれた計測方法を集め、基準として並べたのが、ここにあげた灰塚アースワーク・オブジェクト表です。各基準には、その基準を発案した人の名前と、その人の生活地が記されます。ここでは灰塚「らしさ」は前提されていません。
この基準は、あくまでも1998年という段階での途中経過です。そして、観光者である中谷ワークショップ参加者が発見した価値観にすぎません。この基準は来年、再来年と増え続けうるだろうし、基準相互は脈絡無いままに並べられてもかまわないのです。生まれた価値は実践によってふるいにかけられていくのかもしれません。灰塚に住む方々の目によって基準がつくられていくこともあるのかもしれません。完成形はありません。むしろ、有限の中に無限の価値を発見していくプロセスにこそ、灰塚アースワーク・オブジェクトというプロジェクトの意味があると考えています。
(清水重敦)
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文化財体系図
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