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マルグリット・ユルスナール原作 『死者の乳』より
――お兄さまがた、わたしのためでなく、なくなった弟のために、わたしの子供のことを考えてやってくださいまし。あの児を飢え死にささないで。わたしの胸を埋めてしまわないで。ふたつの乳房が刺繍したブラウスのかげで役立てるようにしておいてくださいね。
毎日あの児を、夜明けと昼と夕方に、連れてきてください。わたしに命の雫が残っている限り、わたしの生んだ児を育てるためにその雫は乳首からしたたりおちるでしょう。そうしてもう乳が出なくなったら、あの児はわたしの魂を呑むでしょう。意地わるなお兄さまがた、このことさせ承知してくだされば、神さまの御許で出逢おう日に、夫もわたしもあなたがたを咎めはしますまい。 |