地域とのつきあい実習
8月6日(金)−8月14日(土)
講師:栗本 修滋+杉本 隆 
■□ 栗本+杉本ゼミ成果:「地域とのつきあい実習」
(1)課題の整理(8月6〜7日)
(2)提案づくり(8日〜9日)
(3)発表会(9日夜)
(4)湿地と周辺制作(10日〜11日)
(5)成果
(6)神社の森のこと−まとめにかえて

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(5)成果
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. 1)周辺の片付け(準備作業)
2)湿地づくりと植栽
3)湿地および周辺の改良
4)鳥居づくり
. 5)おみくじ箱
6)完成前想像図
7)炭焼き
8)池をつくる(実習報告書)

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1) 周辺の片付け(準備作業)
神社の森には間伐された樹木や枝があちこちに置いてありました。すべてを片付けるのは大変な作業になります。池の正面から見えるところだけはなんとかしようということになりました。また、樹木にからまる枯れたツタも目につくものは片付けることにしました。
単に掃除するだけではなく、その樹木や枝の活用を考えました。結果として、ゴミにならずに、制作の材料として資源化できました。
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周辺の片づけ 

2) 湿地づくりと植栽
元の池を拡張しました。手前側にだんだん浅くなるようにすき取って、奥が深い池、手前は湿地になるようにしました。
奥の池には丸太を石の重りで四角に組んで沈め、その中に土を入れて植物が根づきやすくしました。ここにはハスとヒシを植えました。池と湿地の中間にはスイレンを植えました。湿地には、ショウブ、ゴンパチ、ヌマトラノオ、ノハナショウブ、サワギキョウを植えました。湿地の左岸には、ヒオウギスイセンが植えられました。
植え込み作業は地元のご婦人を中心に、学生たちも一緒に賑やかに行いました。
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 池の拡張
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植裁 

3) 湿地および周辺の改良
できあがった湿地・池に人々が集うきっかけづくりをねらいました。
サクラの大木に着眼し、その枝の張りだしている範囲まで池の横の盛土部を拡大して休憩場所とするものです。お花見の季節には、ここに腰掛けて下からサクラを見物できます。使う土は湿地を拡張するときに掘り出した土をそのまま盛土しましました。神社の森のあちこちに置かれていた間伐で伐採された樹木を適当な大きさに切って、腰かけ用のベンチも作りました。
盛土の休憩場所の斜面には、キランソウ、ムクゲ、ナンテン、アジサイ、バイカウツギが地元の人から持ち寄られて、植えられました。
神社の森へ登る道は遊歩道と湿地の横を通っている踏み跡道の2つがあります。どちらも急傾斜です。遊歩道は湿地を広げるときに掘り出した土を盛ってスロープをゆるくしました。仕上げにはダムの水没地で伐採された樹木から作られたマルチング材(ウッドチップ)を敷き詰めて、雑草が生えにくくしました。踏み跡道は現状のまま残すことにしました。遊歩道はゆったり歩けます。踏み跡道は急な代わりに、池を真横に眺めて歩けます。
湿地の形を奥は現状のまま、手前で広がるようにしました。池に向かって左へ行く墓参道に開かれた形で、お墓参りに行く人に池が「いらっしゃいませ」と出迎える感じがでました。湿地の左側にもとから地元の人が植えていたキショウブと湿地が一体になって、自然な感じがつくれました。また、湿地を広げるときに土の中から出てきた大きなワラ叩き石を道標みたいに墓参道に置きました。
湿地の真ん前のコンクリート橋の表面を土で覆って、自然な感じを出す工夫をしてみました。橋の手すりや水路のフェンスまでは、今回は手がまわりませんでした。ちょっとした工夫で良くなったと地元の人が感じてくれれば、周りのいろいろな人工物も今後の改良が期待できます。
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 ベンチ
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キランソウ、ムクザ 
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 コンクリート橋
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ウッドチップ 

4) 鳥居づくり
発案した学生は「第1印象のひらめき」といっています。地元の人からは、鳥居ができれば遊歩道が神社の森の山頂にある奥社への裏参道になると歓迎されました。また、明治か大正頃までは湿地の上の沢筋上部に、古い由緒あるお社があったという話も思いだしてもらえました。地元の人も忘れかけていたのですが、鳥居を作る提案が記憶を揺り起こしたようです。
作業をかんたんにできるように、鳥居の支柱は遊歩道脇に立っていた2本の杉をそのまま使いました。また、横木も長いものを架け渡すのは大変なので、両側に短い木を架けることにしました。真ん中の横木がないところは想像でイメージしてもらうというものです。
このような工夫にもかかわらず、実際の作業は大変でした。間伐されていた樹木を適当な大きさに切り、樹皮をはぎとります。杉の木に取付ける部分は半円にくりぬきます。裏板を作って、これを横木の丸太とボルトで両側からつなぎあわせて、杉の幹に取付けました。長持ちするように表面はバーナーで焼きました。
支柱になってくれた杉の木の成長を妨げないよう、2〜3年ごとにボルトをゆるめてやる必要があります。地元の人たちが面倒を見てくれることになりました。
完成後、地元の人がお神酒を持ってきて、お祓いをしました。その後は完成間もない鳥居の下で、地元の人たちと懇親の時間を持つことができました。
13日には地元の人たちに注連縄(しめなわ)をしめていただき、いっそう厳かな雰囲気が高まりました。
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 表面をバーナーで焼く
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注連縄をした鳥居 

5) おみくじ箱
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木製のおみくじ箱が遊歩道の鳥居をくぐった向こうにセットされました。
さっそく地元の人たちもおみくじを引いて、「大吉だ、わっ凶だ」、「こんな歳で女難の相」などと、大好評でした。

木製のおみくじ箱

6) 完成前想像図
見慣れていたはずの風景でも人手が入ったりして変化すると、なかなか以前の姿を思い出せません。湿地を作る前の姿を記録し、以前の風景を思い起こして比べることで、この場所をより良いものにしていくことができればと提案されました。
湿地を作る前の写真54枚を取りました。湿地完成後の13日に、この写真を撮った位置に撮った高さで取付けました。写真は全体を写したものではなく、雑草や切り株など細かい目線で撮りました。こうして、以前の姿と今の姿をその場で見比べることができます。
地元の人たちもそれぞれの場所に立ったり、しゃがみこんだりしながら、写真と今を見比べていました。ただ、「ふ〜ん、それで」という感じの反応だったように思います。講師としてはこの提案はフォトアートのランドスケープ手法の応用で良い着想だと思ったのですが、全体に動的な作業イベントにワリをくらったのかもしれません。

7) 炭焼き
周辺にあった間伐材や枝などを活用する提案です。
地元の人たちの協力のおかげで、講師も話でしか聞いたことがなかった野伏せ法による炭焼きを体験できました。地面に穴を堀り、そのなかに燃えやすい枝を敷き、上に丸太を組み上げます。丸太に火がまわった頃合を見計らって、土をかぶせます。完全に鎮火してしまわないよう、すこし空気孔をつけるためにトタンでおおい、その上から土をかぶせました。また、土が乾燥しすぎていたので、水をかけて適当な湿気を与えてやりました。
着火から4日後の14日、地元の人たちと「窯開き」ならぬ掘り起こしをしました。なんと中ではまだ火がくすぶっています。暑い、暑いといいながら、掻きだされた炭を集めます。炭もまだ熱く、中にはまた発火するものもあったりで、ヤケドに気をつけながらの作業でした。できあがった炭はゼミ生がきれいにラッピングして、地元の人たちにも記念品として引き取ってもらいました。
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 野伏せ法による炭焼き
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空気孔 

8) 池をつくる(実習報告書) 池をつくる
実習の経過と成果をゼミ生がまとめたレポートもできあがりました。
イラストや図解が入っていて、なかなか楽しいレポートです。
ご協力いただいた地元の人たちにも配布させていただきました。
機会があれば是非参照して下さい。(問い合わせアースワークセンターまで)


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