サマリー

■□ 共通テーマ:雑草
プロジェクトは公共事業のすき間に生じる、「雑草」的な性格を持ちます。本年度は、問題提起として"雑草"というテーマを設定し、ダム建設にともなう自然環境の激変を乗り越える、柔軟性と強さをもった環境づくり、人のネットワークづくり、地域に特定されない普遍的な拡がりに対して、個々の解釈や適応によって応用したり展開の可能性を広げるプログラムとして構成しました。

■□ サマーキャンプ
日程:1999年8月2日(月) - 8月15日(日)
演習講師:岡崎乾二郎(造形作家) 中谷礼仁(建築史家) 栗本修滋+杉本隆(環境エンジニア)
ツアー講師:桑田健吾「灰塚エリアの生態系について」 矢吹正直「灰塚エリアの歴史について」
合同演習:
 ・「DISSOCIATION MANNER 分離して考える」展
 ・御調谷周辺での「坪庭」づくり
 ・創造と模倣-「境木」の分割モデル
 ・草・木・森を描く技術
 ・特別講義 田中文男氏(大工棟梁)・稲垣栄三氏(建築史家)を囲んで
各演習内容:
岡崎乾二郎ゼミ「芸術をつくろう」
テーマは、芸術は生物と同じように自律した領域をつくりえるかどうか。講義前半は、中谷ゼミと合同で行い、主にセセッションや日本の分離派建築会についてとりあげ、その歴史的な位置づけを学びました。建築や美術というジャンルを問わない「芸術の条件」について議論を交わしました。それに即して、参加者は課題にとりくみ、また後半では自由制作を行いました。その成果を総領町の黒目スタジオ、他で発表しました。
中谷礼仁ゼミ「灰塚・視線の型枠」
「環境文化財」--この灰塚エリア内に存する新旧を問わない、人工構築物や自然、生態、植生・樹木、生物などの景観的・歴史的要素などあらゆる可視物を環境美術圏のヴィジョンに従って評価し、今後の環境形成のモデルとしてアースワークプロジェクト独自に指定していくものです。このゼミでは、1998年度のサマーキャンプより引き続き、フィールドワークや課題を通じて「環境文化財」を認定していく基準や方法を獲得することをテーマに、その規準を客観的に伝える道具づくりを試みました。
栗本修滋+杉本隆ゼミ「環境をつくる技術について学ぶ」
前半の講義では、環境の構成要素(自然や植物、文化や社会)とその相互の関わりについて学びました。後半は、灰塚ダム地域の三良坂町ののぞみが丘(水没者の移住地域)の「鎮守の森」にて湿地づくりを行いました。ゼミ参加者は住民とのワークショップで、湿地づくりの案を提示し、ともに制作を行いました。
オープンスタジオ
8月14日(日) サマーキャンプ演習成果や展覧会をバスツアーによって鑑賞。
『地灸』
8月14日(日) 総領町木屋地区周辺

■□ 『雑草』講演会・座談会
講演会は、美術教育・運営や都市計画に関わっている専門家・研究者が、歴史的な観点から現在のアートプロジェクトの状況まで、具体的な事例をあげながら、それぞれアースワークプロジェクト全体の活動に対するコメントを述べる場となりました。夜の座談会では、講演会講師に加えてキャンプ演習講師とともに、講演会の内容やキャンプ演習成果と関連づけながら、プロジェクトを総括的に議論しました。
講演会
日程:1999年8月7日(土)午後3時〜
場所:三良坂町農業活性化センター
講演会内容(演題と講師)
「計画・雑草・サイバネティックス」芹沢高志(P3ディレクター)
「ネットワーク−意味組みかえの瞬間」長田謙一(千葉大学教授)
「エコロジーの図式・スキマ」野々村文宏(美術批評)
講演会
日程:1999年8月7日(土)午後8時 〜10時
ゲスト
長田謙一(千葉大学教授) 芹沢高志(P3ディレクター) 野々村文宏(美術批評)
吉松秀樹(東海大助教授、建築家) 岡崎乾二郎(造形作家) 中谷礼仁(建築史家)

■□ 作品ホームステイ
地元地域の方に、「作品ホームステイデータベース」が蓄積している若手作家、アースワークに関係している作家の作品一覧から作品を選定していただき、その作品を約1ヶ月の間預かっていただきます。美術館での鑑賞と違って、作品と一対一の付き合いをしていただけます。また灰塚に訪れる観賞者は、作品鑑賞だけにとどまらず、地域全体の発見や町めぐりを楽しむことができ、また作品が地域の方との対話が生まれるきっかけになることを目指します。
日程:1999年8月15日(日)-9月12日(日)約1ヶ月
場所:3町商店、公共施設及び個別家庭

■□ アーティストインレジデンス
国内外からの芸術家を受け入れ、灰塚エリアに一定期間滞在して、自らの作品制作を行ってもらう事業です。作家の選考は専門のアーティスト選考委員会が行いました。
作家が町に滞在し、制作活動をしていることで、その存在そのものが地域に対し刺激となります。作家はレジデンス期間中にオープンスタジオで地域の住民の方々及び関係者にその活動を提示し、レジデンス後、制作した作品を中心に展覧会を開催しました。
日程:1999年8月2日(月)-10月10日(日)約2ヶ月
国内作家
牛島智子(美術)、小野弘人(美術・建築)
滞在場所:ふるさとセンター田総
滞在期間:1999年8月2日(月)- 10月10日(日)
国外作家
カルロス・ニエト(ビデオ)[スペイン]
横溝 静(写真)[イギリス]
滞在場所:ふるさとセンター田総及びユーシャイン夢亭
滞在期間:1999年9月1日(水)-10月12日(火)
オープンスタジオ
日程:1999 年10月2日・3日(土・日)
アーティストインレジデンス展覧会
日程:1999 年11月1日(月)〜11月7日(土) 場所:黒目スタジオ

■□ アースワーク宣言
これまでのプロジェクトの活動をふりかえり、今後にむけて、建設省・吉舎町・総領町・三良坂町・灰塚アースワークプロジェクト実行委員会によってアースワーク宣言が行われました。また、よりよいダム周辺地域づくりを目指して、ゲストをお迎えし、これから考えていかなければならないこと、取り組んでいかなければならないこと、その具体的な方法等について、トークセッションを開催しました。
日程:1999年9月4日(土)
場所:吉舎町中央公民館
アースワーク宣言
「 地域に暮らす人々やここを訪れる人々が、川や湖の山野の緑とここで生まれた芸術を、身近で、飽きずに、長く楽しめるダム環境の実現を目指した『アースワークの杜づくり』を進めます。」
【共同宣言者】
 建設省江の川総合開発工事事務所
 吉舎町/総領町/三良坂町
 灰塚アースワークプロジェクト実行委員会
トークセッションパネリスト
 磯崎 新(建築家)
 岡崎 乾二郎(造形作家)
 森保 洋之(広島工業大学教授)
 森山 利夫(建設省 江の川総合開発工事事務所長)
関連展示会 同時開催


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