牛島智子  
  1958年 福岡生まれ(美術)
  ふるさとセンター田総 滞在
牛島智子

灰塚でのともこちゃん
 そうここ5、6年感じていたことなのだ。時代が変わっていく胎動のようなもの。  今回レジデンスに参加したのは4作家で、カルロスは車椅子の生活をしていたのでベロニカがアシスタントすることで来ていた。彼らの滞在場所は設備の整った少し離れた所だったし、弘人は8月から入っていて、ちょうど9月は東京に帰ったりだったのが少々残念だった。一番長く一緒にいたのが静だった。静といえばしずかちゃんである。様子がわかってくると私はのび太やドラえもんをダブらせてし・ず・か・ちゃんとお話ししていた。
 10月7日までだった、アイズワイドシャットをロードショーで上映していたのは。立ち合いたかったのだ、キューブリックの最後の作品には。広島では上映していたが灰塚では今しかできないことがたくさん在った。よくぼうは欲張りだ。弘人は突然やってきては四輪駆動車のようにエンジン音轟かせ仕事する。深夜の1時だろうが、2時だろうが電話する、いつのまにか玲子、現われて今度はスポーツカーのように静かに、滑るように仕事する。朝起きたら、机の上に黒目スタジオがポコッとのっていた。  入口が現われてはワープしていくデヴィット・リンチも私にとって大切な映画監督だ。カルロスも好きだと言っていたのでもっと英語が話せたらなと思ったが、話せない不自由さは想像力をかきたてる。歩けないこと、移動することをかきたてる。カタロニアでカルロスと言えばもっと大事な意味があるのだろうか、大雑把な私はいつのまにか翼を欲しがったイカロスと結びついて浮遊するような、俯瞰するような感じで作品に同化していた。
 三次の霧はロンドンの霧とこの時はおんなじだったのか、9月末に静のパートナーのフィリップがきた。のび太モードも使っていた私は出来すぎ君の登場に少々戸惑ったが、一人の人物をどこから見るかでこう変わるのかおもしろがっていた。
 そして静の作品、人と人が対峙するときの止まれ、脳裏への焼き付け、整理、までの瞬時の戦い、そのような事を自在に動ける想像という遠いけど、一番近い場所で見ていた。一度撮影に付いて行きたかったが、立ち入ってはいけない気がした。フィリップに私の作品はサイケデリックだと言われた。とても嬉しかった。最後の夜、音楽の話しになり、多くがUKの音楽に影響を受けていた。「日本人としてどうなの」とフィリップに切り返された。返す言葉もないのだが、何か欲しがっている音がそれらのレコードには在ったのだ。音楽や映像は羨ましい、これからももっともっとそうなるだろう。流通がさらに便利になり文化の国境は薄らいでいくだろう。地球と人間の大きなバランスが取れてきたと思いたい。「永遠は怖いわ」ニコール・キャッドマンが言った。そう地球の限界が見えてきた。もう神には頼めないのだ。
 地ビールの店でたらふく食べた後、帰りの車に乗り込み、カルロスは弘人に車椅子を積んでもらおうと預けた。夜の帳のなか街灯に照らされて弘人は車椅子に乗って遊んでいた。弘人のどちらつかずの足が揺れて優しかった。興じたカルロスはベロニカに撮影してとビデオカメラを渡していた。
 レジデンスの思いでは妙に美しい。情報が渦巻く中、媒体に載らない部分ももっと欲しがっているのだ。作家についてのことを書いたが、今回レジデンスを支えてくださったスタッフの皆さん、地域の方々ともこれでしか味わえない色とりどりの綾があった。一ヵ月という長さのライブというステージだったのだろう。
- W O R K S -

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種まく人

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オハヨウの朝

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カメオトコ

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チセコさんの仕事

■ 経歴
  1981  九州産業大学芸術学部美術学科卒業
1985 Bゼミスクーリングシステム修了

■ 個展
  1984  ギャラリー手/東京
1986 ヒルサイドギャラリー/東京
エリア・ドゥ・ギャラリー/福岡
1987 コバヤシ画廊/東京
アートスペースユアーズ/伊東
ギャラリー手/東京
1988 ヒルサイドギャラリー/東京
1991 ヒルサイドギャラリー/東京
1992 スカイドア・アートプレイス青山/東京
1993 スカイドア・アートプレイス青山/東京
1996 スカイドア・アートプレイス青山/東京
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■ グループ展
  1982  するめんた(横浜郵便貯金会館/横浜)
神無月乱反射空間(平和島公園/東京)
1983 Bゼミ展(横浜市民ギャラリー/横浜)
RED HOT(村松画廊/東京)
1984 Aゼミ展(Gアートギャラリー/東京)
多数多様態展(梁画廊/京都)
1985 臨界芸術'85年の位相展(村松画廊/東京)
1986 ニューウェーブの生成変化(Gアートギャラリー/東京)
1987 ARTIST'S NETWORK expanded 1987(福岡県立美術館/福岡)
1989 現代のヒミコたち−新しい造形を求めて(イムズ/福岡)
IAF1989(福岡市美術館/福岡)
1993 Triangle Artists' Workshop(パインプレインズ/N.Y. )
1995 第30回 今日の作家展「洋上の宇宙・アジア太平洋の現代アート」
(横浜市民ギャラリー/横浜)
1998 ユートピアン・ガレージ(モダンアートバンク・WALD/福岡)


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