anonymous encounter / アノニマス エンカウンター |
このプロジェクトは去年の冬にロンドンで始めて、それ以来続けているものです。私が全く知らない、見知らぬ人に手紙を書き、日時を設定して、言葉を交わさず、他人同士の関係を保ったまま、その人の家の窓越しに、カメラを通して出会うというプロジェクトです。アノニマスというのは英語で「匿名の、無名の」、という意味で、エンカウンターというのは「遭遇、出会い、対面」という意味です。 |
知らない人同士が眼を合わせるのは、何かを伝えたいという意図がある場合以外、現実の生活の中ではほとんどありえないことです。「他人」というのは、街ですれちがっても、私には関係ない、私の世界の外にある、私にとってはほとんど存在しないものであり、考えたりもしないというのが普通です。私は私と関係を持つ人達で構成された親密な世界に生きています。でも、「他人」という人達は確かにそこに存在します。一人ひとりが生きていることの強度やリアリティを感じながら、生活しているのです。 |
これは当たり前のことですね。でも私は「他人」という私の見知らぬ人達がそこに私と同じように確実に存在することを、その人達となんらかの関係をつくらないまま、他人としてあらためて確認し、それを記録したかったのです。
灰塚では、9人の方に手紙を出し、7人の方々に承諾していただけました。皆さんの御協力に心から大変感謝致します。この作品は、窓辺に立ってくださった方々との共同作業であり、あの窓ごしに出会った時のお互いの感覚が画面に出ていればと思います。 |
このプロジェクトはいろいろな方々のお世話になりました。手紙を出した方の中で、承諾していただけなかった2人の方には、怖がらせてしまったお詫びを申し上げます。そして、もう一度、窓辺に立って下さった方々、どうも本当にありがとうございました。 |