地灸の作り方
Chapter01:  はじめに
.
地灸 灰塚アースワークプロジェクト
実制作担当チーフ:小 田 貴 史

.

「地灸」は「大地にお灸をすえる」考えから生まれたインスタレーション(野外の仮設展示物、そこの土地を意識した作品)です。1996年から毎年行われるようになりました。
ダム建設で休耕地になってしまった土地の草を集めてお灸を作って、地元の方とキャンプの参加者が一斉に点火して完成します。点火されたひとつひとつのお灸からは白い煙がもくもくと立ちあがって、山の谷間や木々の間にけむりがながれこんで、あたり一面が白いカーテンをいくつも重ねたような幻想的な景色ができあがります。草から煙を出す単純な出来事なのに、みなさんは真っ白になった地灸の廻りを歩き回ったり、遠くで煙の様子を眺めたり、一所懸命に濃い煙を出そうとしたりと今までは気に留めてもらえなかった場所が楽しむところに変わりました。集めた草たちはそこにあった草たちですから、隣のお灸では出る煙の匂いや燃え上がりからがまちまちなのも魅力と思っています。「地灸」は、畑〜休耕地〜再生のメッセージと新しいことを生むことの痛みと治療、これから別の役割を背負ってもらう応援の意味が込められているのです。
10.4KB
 山に囲まれた場所

12.7KB
 お灸を並べてゆく

10.8KB
 ケムリを出して地灸のはじまり
.
25.8KB
三良坂で行われた地灸計画案(1998年)

3町(総領町、吉舎町、三良坂町)の共通の悩みの雑草は草を刈って、集めて、みんなでお灸を作ることで解決しながらも癒されてしまう不思議な作品です。その場所にあるもの(草)にわずかに手を加えることで別の何か(お灸)を表現するという行為には「その場所」の新しい見方を引き出す役割もあるのではないでしょうか。

* インスタレーション Installation Art
インスタレーション・アートは1970年代から盛んになった。インスタレーション(設置物)とは、場所を特定する美術作品で、美術館や屋外の場所に置くために制作される。個々の美術作品を展示する場所が、単なる中立的な背景になっている(伝統的な吊り下げの方法がそうである)のとは異なり、設置した作品を構成するさまざまな要素の集合が、選ばれた場所と影響し合うように配置されており、体ごとの美術空間の中に入っていくような感覚を鑑賞者に提供する。このジャンルの実作者としては、ヨーゼフ・ボイス、クリスチャン・ボルタンスキー、ハンス・ハーク、ドナルド・リプスキーらがいる。
ポール・デューロ マイケル・グリーンハルシュ著、中森義宗 清水忠共訳、『美術史の辞典』、東信堂、1998年、p.69
Next!!