アートスフィア灰塚 2000アーティスト・イン・レジデンス
■□ 第二期:藤枝 守  FUJIEDA Mamoru
 ■ 経歴
  1955 広島市生まれ
   カリフォルニア大学サンディエゴ校音楽部(Ph.D,in Music)
   奨学金・助成金 Asian Cultural Council(U.S.A)
 ■ 主な活動(パフォーマンス)
  1990 「Tech Poem Harmonica」(川崎市市民ミュージアム)
「Count Down/Coxesi/Cloudy」(津田ホール)
  1991 「環太平洋電能音楽祭」(築地本願+ジーベックホール)
「サウンドカルチャー'91」(シドニー)
  1992 「マラソン・ソニック・エンヴァーラメント」(東京バーン)
「リスニング・ガーデン」(パリ・ユネスコ本部)
「Piano Coccon」(Ballhaus Naunystrasse ベルリン)
パフォーマンス(Gallery Sagak ソウル)
「Tokyo Dance Scenery」(Tokyo FMホール)
  1993 「音の身体の音──I and I vibration」(伊丹アイホール)
  1995 ブッチ・モリス「コンダクティング」(水戸芸術館)
Today's Japan フェステイバル(トロント)
「詩の外出」(天王洲アイル・スフィアメックス)
  1997 美音子グリマーの音響彫刻とのコラボレーション(宮城/埼玉県立美術館)
「響きの波紋」(宇都宮美術館)
 ■ 主な活動(サウンド・インスタレーション)
  1991 「ソニック・パーセプション」(川崎市市民ミュージアム)
「池袋電能カフェ」(セゾン美術館カフェ)
  1993 「00-Colaboration 詩と美術」(佐賀町エキシビット・スペース)
  1995 「エコロジカル・プラントロン」(水戸芸術館)
「Skewness Phase」(ギャラリー日鉱)
「植物律」(アートフォーラム谷中)
  1997 「ピアノラ・プラントロン」
(播磨まちびらきイベント〜兵庫県立先端技術支援センター)
「エア・プラントロン─浮遊する植物」(ナディッフ・ギャラリー)
 **** 著作/主な委嘱作曲作品の紹介は別掲
藤枝守
Chanting with Chimes
作品展示風景
ワークショップ「Chanting with Chimes〜聴くことから始まる」
 ◆ 2001年3月8日  ◆ 場所:総領町町民会館
 ◆ 参加者:コーラスグループ キャッツ・アイズ
      (迫江登基子、宗兼安子、沢 由妙、藤野冨美代、大下芳枝、沢 一枝、中井恵子、矢吹律子、丸山慈加)

 このヴィデオは、ワークショップ「Chanting with Chimes〜聴くことから始まる」の模様を記録したものである。このワークショップでは、「聴くこと」を通じて、自分自身の存在を意識し、そして自分を取り巻く周囲の環境の事象と繋がり合うための過程が段階的に進行していく。
 まず、参加者は円環状に互いに向かい合って座る。そして、呼吸を深くしながら、自らの呼吸そのものを意識する。そのとき、外界から体内に風が吹き込み、その風が体内をめぐり、そして、外界へ吹き出されていくというイメージのなかで深い呼吸を繰り返す。
 深い呼吸の間合いに慣れ、そして、それまで気づかなかった周囲の微妙な気配が感じられるようになったら、息を吐くときに、口の形や、歯や舌の位置を変化させながら、口元から微かなノイズ(息もれの音)を発生させるようにする。そのとき、自らが発する口元のノイズを「風の音」にみたてながら、そのノイズに対して静かに耳を傾ける。さらに、他者が発するノイズや会場内の空調からきこえてくる保続的なノイズに対しても注意を払いながら、自分のいる場にさまざまな「風」が渦巻いているように想像してみる。
 このような息や部屋の空調によるさまざまな「風」が巻き起こる場のなかで、一本のチャイムが静かに鳴らされる。余韻が極めて長いその音は、波紋のように会場全体に広がっていく。そのチャイムの音に意識を向けながら、その音高に合わせて、今度は、息を吐くときに、静かに声帯を震わせて「声」を発してみる。そして、参加者全員でその微か「声」を高めながら、互いに「声の響き」をはぐくむように唱えていく。
 その一本のチャイムは、参加者のひとりの手に渡される。渡された者は、そのチャイムに息を吹きかけるように、息を吐くときのタイミングでそのチャイムを打ち鳴らし、そして、その音高に合わせて息の続くかぎり唱える。また、他のメンバーも、そのチャイムの音高に合わせて唱えていく。
 ひとつの音高による多様な声が響くなかで、異なる音高をもつ別のチャイムが鳴らされる。このあらたなチャイムの音の出現によって、これまで漂っていた響きの波紋は、その様相を変化していくが、さらに、そのあらたなチャイムの音高に合わせて唱えてみる。そのチャイムは、別のメンバーのひとりに渡され、そして、また、あらたなチャイムが次々と加わりながら、参加者全員に一本一本チャイムが渡される。つまり、ひとりひとりにチャイムが渡されることによって、各々は自分が唱えるべき音を所有することになる。そして、それぞれのメンバーは、手にもったチャイムの音高に合わせて、さまざまに母音を変化させながら自由に唱えていく。
 これらのチャイムは、うなりのない純正の音程によって調律されている。チャイムの音高に合わせて唱えられる声は、とうぜん、純正に協和した状態で重なりながら、さまざまに共振し合い、会場全体を共鳴させていく。チャイムが醸し出す振動を肌で直接感じ、さらに、自らの声と他者との声が溶け合っている状態を鋭敏に察知しながら、自らの「声」と周囲からのさまざまな「声」に聴き入ることによって、自らの存在と環境とが繋がりあっていることが実感できる。
 このような「声の響き」が充満した状況のなかで、今度は、自らの声が円環状に並んだ他のメンバーの誰かひとりの耳に達するようにしてみる。つまり、声によって呼びかけるのである。そのとき、呼びかける人の姿やイメージを浮かべながら唱えるようにする。そして、しばらくしたら、呼びかける相手を変えてみる。
 このような「呼びかける」という気持ちを抱きながら唱えているうちに、誰かの声が自分に対して向けられているように感じられたとする。そのとき、その相手の声の高さに合わせて、その声に重ねながら答えるように唱える。もし、誰の声も自分に向けられていないと思ったら、誰かに呼びかける行為を続ける。
 以上のように「聴くこと」を強く意識しながら、自分の呼吸の間合いに基づいて「唱える」という行為を保持していくうちに、自らの存在が他者と関わりながら、居合わせた環境のなかにエコロジカルな連鎖が生みだされていく。それは、自らが他者と浸透し、環境と同化していく実感でもある。

アーティスト・イン・レジデンス伊部年彦新生活福井裕司南川史門山内崇嗣
アーティスト・イン・レジデンス福永信藤枝守吉野裕ビル・アーノルド
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